9月第1回 プログラム『あなたのかお わたしのかお』
2023年9月2(土)、3(日)、24(日)
楽しかった夏休みも終わり、日常がスタートしました。
久々にみんなの元気な顔が揃いました。
後期はキャンバスでの自由制作に入っていきますが、今年は「自画像」というテーマで、「自分を見つめる」ということに焦点をあて進めていきます。9月の第1回目では、その導入も兼ねて「顔を描く」ということに挑戦しました。
「あなたのかお、わたしのかお」というプログラムに取り組みました。
初めに、自画像や肖像画で有名な作品を紹介し、鑑賞しました。制作では、顔のパーツをバラバラに描いてハサミで切り抜き、最後に組み合わせて「顔」を作ります。
鑑賞の後、お友達の顔を観察したり、鏡をのぞきこんだりしながら、集中して描いていました。顔をいきなり描くのは難しいという人でも、目、鼻、口、と一つ一つ丁寧に観察して描いていくとすんなり描くことができます。みなさん描く力や見る力がついてきているのを感じました。 他にも、まゆ、髪の毛、帽子、などを描き、はさみで切り取り水彩絵の具で色をつけました。開いている目、閉じている目、舌を出している口など、色々な形を描いていました。完成したら、それらを輪郭の上に配置して顔を作りました。
切り取った顔のパーツを、顔の上に置いて位置を変えたり動かしてみると、百面相のように色々な表情が生まれます。また、数ミリ位置が変わるだけで顔は印象が変わります。今後の制作で顔を描くときはこの体験を参考にしておおらかに描くことができるかもしれません。
まるで自分の分身みたいに、愛おしそうに操っている人もいました。
最後の発表では、みなさん誇らしげに作品を見せてくれました。
リアルな顔を完成させた人、ピカソに負けない個性的な顔を完成させた人、可愛いアイドルのような理想の女の子を作った人。
様々な顔がたくさん生まれ、笑いに包まれた楽しいプログラムとなりました。
今回の観賞で取り上げた作品と子供たちのコメントについて紹介します。
以下の画家や彫刻家の作品をモニターで鑑賞し、どのような感想を持ち、どう感じたのかを言葉で伝え合いました。1つの作品から、想像力と対話がどんどん広がってゆき、語り合いながら観賞を深めるおもしろさを、みんなが体感してくれているようでした。
●ゴッホ作《耳に包帯を巻いた自画像》
「顔の肌色に緑色を重ねているけど、それがとても良い感じ」「なぜ、耳に包帯をしているのかとても気になる」「色をぬる筆の使い方が、たて方向に向いている」「背景に絵が描かれているけど、どんな絵なのかなあ」みんな細かいところまで興味を持ってよく観ていいました。「後ろに貼っている絵は日本の浮世絵だよ」「ゴッホは自分で耳を切ったから、包帯をしてるんだよ」と解説してくれる人もいました。
昨年から参加している人は、ゴッホの人生を観賞で取り上げたので印象深く覚えていたようです。ゴッホが目や鼻を部分的に観察して描いているスケッチも紹介しました。
●ピカソ作《泣く女》
「顔の色がふつうじゃないから、よほど悲しい気持ちなんじゃないかな?」「はながとがって、口と歯がガタガタだから、泣いているのにとてもこわい顔だね」「ゾンビみたい!」「目やまゆげが上を向いたり、横を向いたりしてる。変な感じがする」
こんなふうに対話がすすむにつれ、《泣く女》の心には、悲しみだけではなく、色々な気持ちがかくれているのではないかと、気づいてゆきました。
また、横から見たところと、前から見たところを一つの画面に描いている。という「キュビズム」についても紹介しました。
●モディリアーニ作《ルニア・チェホフスカの肖像》《椅子に肘をつくジャンヌ・エビュテルヌ》《ポール・ギョームの肖像》
「首が長い!」「顔も細長い」モデルの写真を紹介すると絵との違いにみんな驚いて見ていました。デフォルメの力で絵に個性が生まれることについて感じてもらえればと思います。みんなでモデルになったつもりで、絵と同じポーズをとってみました。自分だったら、どんなポーズで描いてほしいかな?
「ヒゲをはやしたタバコをすっている男は、きっとお酒をのむ場所、バーにいると思う」 絵全体の雰囲気から、こんな大人びた想像をする子もいました。
「目が緑色をしている」目の中の、白眼と黒目の表現についても観察しました。その後の制作では目の中をしっかりと描いている人が多く、観賞で感動したことが反映されていたように思います。
●メッサーシュミット作《性格表現の頭像》
悲しんでいる顔や、驚いた顔のような様々な表情をした彫刻のシリーズです。
とてもユニークな表情をしている彫刻の顔真似をして、顔の筋肉の動きや、しわの観察をしました。みなさん顔まねも上手でした!
同じ人物でも、表情によって、目鼻口の形や位置が大きく移動していることに気づきました。
担当:内藤、船井